ももいろクローバーZにとって、新年から春にかけては、この2年というもの「いつも通りのももクロ」で見せられない、ほろ苦い季節だった。
一昨年は、喉の治療のため有安杏果が声を出せない状態で、年明けの「試練の7番勝負」を戦った。「青山ワンセグ開発」のMCを務めていたこの時も、杏果はフリップでMCをこなしていた。
昨年は、佐々木彩夏が足を痛めて踊れなくなり、そのまま、「ももクロくらぶxoxo ~バレンタイン DE NIGHT だぁ~Z!2015」「おしいろマンハッタン♥ ~なんてこったパンナコッタ~」をこなすこととなった。
勿論その度に、彼女たちは欠けたメンバーのパフォーマンスを補って余りあるくらいのライブを見せてくれたのだが、「何かが足りない」状態だったのは間違いない。
そしてこの冬。「ももいろクリスマス2014」が終わって、年末の大イベント、紅白歌合戦を残すのみとなり、今回披露した「My Dear Fellow with Mononofu JAPAN」の、モノノフパートの準備も済み、彼女たちの衣装をメッセージで埋め尽くして彩色し、後はその衣装を着て、大みそかの舞台でパフォーマンスすることを残すのみとなった年末。
またしても杏果にアクシデントが起こる。
インフルエンザに感染して、大みそかは杏果抜きで出演することとなったのだ。
もちろん、そんなことでしょげ返るメンバーでもモノノフでもないし、杏果がいない分、さらにパワーを増して大みそかに臨もうというみんなの想いが、今回も杏果不在のハンデをものともせず、楽しく感動的なステージを作った。
でも、でも。
やっぱり足りない。
モノノフたちが作成に参加した、思いが詰まった衣装を着ている杏果を紅白で見たかった。
年明けの「ふじいとヨメの七日間戦争」でも、杏果がいる「てんかすトリオ」を見たかった。
何かが終わってない。しっくりこない。
そんな感情があったのも確かだ。
「ふじいとヨメの七日間戦争」の「俺のザ・ベストテン」のライブ前に、まだ本調子ではない杏果が、ライブ欠席の挨拶をするため、観客の前に姿を見せた時に分かった。
あの時のモノノフの歓声は、杏果に対する想いそのものだ。
「杏果がやっぱり必要なんだ」
「無理はしてほしくないけど、杏果の歌っている姿を、笑顔を見たい」
そんな 、赤裸々で正直なモノノフの願いと想いが、あの歓声には詰まっていたし、実際杏果不在の「永遠のトリニティー」は、何か足りなかったし、「ありがとうのプレゼント」も聴きたかった。
そんな気持ちの後の初ライブが「月刊TAKAHASHI 1月号」。
自分はこのライブで、杏果の元気な姿が見られるだけでいいと思っていた。
杏果が帰ってくることを心から楽しみたい、それだけで十分だと思っていた。
それが、15分押しの開演直後に聞こえてきたのは、去年の大みそかにやり残した、5人とモノノフが歌うべきだったあの歌のイントロ。
「My Dear Fellow with Mononofu JAPAN」
杏果があの場にいたら踊ったであろう振り付けを5人で、モノノフの歌声もそのままで、そして曲おわりの夏菜子のシャウト 「去年できなかったことは、今年やればいい!!」 。
これで、僕らの2014年は終わり、2015年が始まった。
この1曲で、LV会場にいた僕は(そしておそらく、相当数のモノノフも)涙腺崩壊。
こんなサプライズ想像してなかったのに、すでにお腹いっぱいである。
「予想は裏切るけど、期待は裏切らない、それがももクロ」
と以前言っていたモノノフがいたけど、まさに、その通り。
その流れでovertureが流れ、ショートカットの夏菜子がメンバーとステージ上で出欠をとって、2015年の初ライブが始まった。
そして、60分と予定されていたライブは、これといった茶番MCもない、濃密な12曲で終了。
その後のアンコール。
新たな人気曲となりそうな「Chai Maxx ZERO」の次に聞こえてきたのは、恐らく「幕が上がる」劇中バージョンの「走れ!」。
それに続いて「いつか君が」。
大満足のセトリだし、「Chai Maxx ZERO」「走れ!」もそうだし、何だか今年のももクロが新たな世界へ向けて疾走していく宣言のようなセトリに感じて、今後が楽しみになった。
そして翌日、KISSとのコラボ曲「夢の浮世に咲いてみな」のMVが発表されて、「幕が上がる」の前売り券が発売され、2015年のももクロが本格的にスタートしたわけだ。
でも、本当に嬉しいのは、このライブで、いつも通りのももクロが帰ってきたこと。
確かに杏果のパフォーマンスはまだベストには遠かったかもしれないけど、この5人が揃ってライブをすることの大切さを本当に痛感した。
だって、どんな壁や課題があろうと、この5人とチームももクロとモノノフがいれば、へっちゃらだから。
今年は、KISSコラボに始まって、映画、舞台、ドラゴンボールZの映画主題歌に4月の「ももクロどんたく」と、上半期だけでもいろんな仕掛けがありイベントがあり挑戦がある。
ネット上のいろんな掲示板で「幕が上がるがコケたら嫌だから、事前にハードル上げない方がいい」とか「KISSコラボして売れないとショックだ」とかの書き込みを見たけど、僕らはこれまで、力をセーブして安全運転で仕事をこなすももクロなんて見たことないし、いつどんな時でも懸命なのが彼女たちの「平常運転」。
だから僕らはそれを応援して、気持ちを届けてあげることだけを考えればいい。
去年、クライマックスシリーズで敗れたオリックスの森脇監督が「アスリートは、勝ち続けることが強さじゃない。負けたところから再び立ち上がることこそ強さだ」と言っていたけど、本当にその通りだと思う。
ももクロも、挫折したら、失敗したら、また前を向いて立ち上がって進めばいい。
何度くじけても転んでも、手を携えて一緒に前を向いて走ってくれる人たちが大勢いることを僕は知っているし、それが出来るのが、ももクロと僕たちの「強さ」だと思っている。
でも、いいライブだったなあ。
勇気も、喜びも、サプライズも感動も詰まった、濃密なライブだった。
でもこれが、いつものももクロのライブ。
「平常運転」が一番なんだよなあ。
【2015.01.21】