そこは、いつものような熱狂がメインの空間じゃなかった。
いつものように、推しメン色のグッズを身に着けて、宴の雰囲気はプンプンしていて、スタッフとのツーショット撮影には行列ができ、子供から大人までが、本当に嬉しそうにその場にいるのはいつもの風景で、自分の連れはアリーナ最前ブロックのチケットを手に、抑えられない興奮に高まっていた。
でも、今日は、熱狂がメインのイベントじゃなかった。
「ももいろクローバーZオフィシャルファンクラブ ANGEL EYES 3周年記念 ご継続感謝イベント」
幕張メッセイベントホール。
自分が参戦したのは16:30からの2回目。
今日はライブがメインではない、というのは知っていた。
では何をするのか。
事前に情報を得ていたのは、あーりんvsチビノフの綱引き対決、杏果のスイカ割りという、本当に魅力的すぎるゲームと、ANGELEYESの歌の収録。
ところが、のっけから別の魅力的な出し物が。
司会の音頭で、メンバーが一人ずつ、自分で選んだ曲で、客席から登場。
これに30分。
自分は黄色推しだけど、れにちゃんの私服姿の何とキュートなこと!
「若い女の子が練り歩いてるの見て何が楽しいんじゃい!」
と言われそうだが、自分的にはこればっかりでもいいくらい楽しい。
そして、5人そろってからは、ANGELEYESの歌の収録と、杏果のスイカ割り→5人とスタッフがそれを貪り食う。
チビノフと5人の記念撮影、ロトまきの、そして5曲のミニライブ。
これで2時間半。
一言で言うと、グダグダなイベントなんだけど、この空気がいい。
夏菜子のひょうきんさと、ウラハラな大人っぽさがいい。
しおりんのマイペースさと、MCの器用さと、階段上り下りでバテてしまうか弱さがいい。
あーりんの、スイカ割りの時の子供っぽさと、記念撮影の時のチビノフに対する優しさの対比がいい。
杏果の、前面に出ている底の無い優しさと、真面目さの裏側にある面白パフォーマンスがいい。
そして、れにちゃんの、「話さなければ美人」なのに、エキセントリックな発言連発菜ギャップに萌える。
普段の、特に大箱のライブは、ダウンタウンももクロバンド、ゲストの皆さんを始めとした人たちがいて、そこでは、彼女たちは「パフォーマンスのプロ」としての立ち居振る舞いを要求され、それをきちんと果たしている。
でも、この場は違う。
彼女たちとモノノフたち、この両者が許せば何だってアリだ。
甘えがあってもいい、ハチャメチャでも、グダグダでもいい。
トークが下手でも、ミスがあってもいい。
彼女たちとモノノフが許せば何でもありという、この距離感がいい。
そして、こういうイベントを体感すると、自分は思い出す。
彼女たちは今や、国立競技場や横浜国際を埋めるビッググループになったけど、自分が彼女たちを好きになったきっかけは、極楽門のあの熱狂と楽しさであり、「ももクロ団」のグダグダさと彼女たちの天真爛漫さであり、それは今も何も変わっていない、ということを。
ももクロには本当にいろんなことがあって、彼女たちもすごい勢いで成長していて、昔の事なんでつい忘れそうになるけど、時々立ち止まって、こうして原点を見つめ直す、そういうイベントがあることって、すごく幸せなことだと思う。
そう、AEイベントは、彼女たちとの距離が遠くなっていないことを確認するためのイベント。
皆が楽しめるように、モノノフはお互いに気遣い、メンバーもいつものようにモノノフが喜ぶことをして、「女子供にやさしいグループ」であることを証明するかのように、チビノフを喜ばせ、その光景を見て、他のモノノフもニコニコしている。
そうした空気感を味わうための、大切なイベント。
モノノフのルポで、こんなことが書かれていた。
「となりのギャルが『ホワイトベレーかぶるのホントにイヤ、髪型崩れるし、ダサいし』といっていたのだが、最終的に『でも仕方ないか』といって装着していたのが微笑ましかった」
彼女は、きちんとルールを守ってホワイトベレーをかぶった。
別にかぶらなくても注意されないのに。
でも、かぶる。
これがモノノフ。
ああ、気持ちのいい空間だった。
[2015.8.30]